先日、当ホームページにて開催を告知しておりました、学習会「『あたらしい街』づくりにおける子どもの視点」をぶじ開催することができました。26名の方々が集まり、仙台市における復興に向けた街づくりの現状やそこでの子どもの視点のありようについて共に知ることができました。参加してくださった皆様、ありがとうございました。
仙台市復興事業局移転推進課の小野寺寿治氏は災害危険区域の移転事業の現状を、NPO法人都市デザインワークスの榊原進氏は移転先における住民主体の街づくりについて、それぞれ話題提供してくださいました。また当会のプレーリーダーから、仮設住宅やみなし仮設住宅の集まる地域で取り組んでいる子どもの遊び場づくり活動を紹介させて頂きました。そして最後に、参加者全員でこれからの支援のあり方、当事者の街づくりへの取り組みについて話し合いました。
集団移転および復興公営住宅について (仙台市 小野寺氏)
小野寺氏からは、主に集団移転および復興公営住宅に関することについて話を聞くことができました。まず、災害危険区域※1から移転することの重要性を確認した上で、移転先として以下の①~③の区域※2があることを紹介して頂きました。
① 震災以前から土地区画整理事業を進められていた市街化区域の先行4団地
② 現在仙台市が直接用地の買収・整備が進めている市街化調整区域7団地
③ 組合施行の区画整理事業での整備を予定している市街化区域2団地
次に、現在採られている住宅の再建方法として以下のA~Cのケース※3があることを教えて頂きました。
A. 上記①~③の13地区に集団移転するケース
B. 移転先を被災者が単独で探すケース
C. 復興公営住宅に移り住むケース
また、このような移転に際して国や仙台市が実施している様々な支援※4があること、集団移転先・単独移転の事業スケジュール※5や被災者は被災前に住んでいた場所により近い移転先を希望するケースが多いということ、集団移転先の土地利用計画についても説明して頂くことができました。
復興公営住宅を構成している各区画※6の説明や、仙台市で造成する地区については地区ごとに移転希望者と4回「まちづくり意見交換会」※7を開催していることについても説明を受けました。仙台市で供給する計画の復興公営住宅3000戸の内訳※8や、復興公営住宅を整備する上での基本的な考え方※9、入居形式の種類※10や高齢者の見守りのための制度※11、優先入居資格者への意向調査の実施状況についても教えて頂きました。集団移転者うち15歳以下の子どもが占める割合が10%、子育て世代の30代が10%という話も聞くことができました。これらの世代は六郷・七郷に10名程度、荒井地区に50名程度移転してくるということでした。
※1 |
東日本大震災クラスの津波が発生した際に堤防・嵩上げ道路等の多重防御を施しても4m以上の浸水が想定される区域 |
※2 |
仙台市復興事業局震災復興室「仙台復興リポート vol.5」p9参照 |
※3 |
同書p14参照 |
※4 |
同書p10参照 |
※5 |
同書p13参照 |
※6 |
宅地、コミュニティーを形成・維持していくための集会所、農業用倉庫、緑地・公園の4つで構成されている |
※7 |
早い段階で着工しないと工事が進められないハード面から順に意見を聞いている。集落全体を見据えて施設の位置を決める等の意見が出ている。今後は公園の遊具、樹種、町内会、建物の建て方のルール等の意見の交換を予定している。 |
※8 |
仙台市復興事業局震災復興室 前掲書p17参照 |
※9 |
バリアフリー化、見守りのできる部屋の設置、単身で子育てできる間取り、共同で利用できる集会所の設置等 |
※10 |
優先入居(災害危険区域居住者対象)、入選順位の公募(高齢者、障がい者、一人親の世帯対象)、一般抽選の3種類 |
※11 |
高齢者の見守りのため4世帯がまとまって入居できるグループ申込み制度 |
街づくり事例におけるコミュニティづくり・子どもの視点の現状について (榊原氏)
榊原氏からは、移転先で進行する街づくりの現状について話を聞くことができました。まず、移転先で新たに形成されるコミュニティは以下の①~⑦のタイプに分かれることが示されました。
① 現地再建…南蒲生地区等の従前地域の被災者によるコミュニティ
② 集団移転A(新規造成団地)…同一地域中心の被災者及び周辺住民のコミュニティ
③ 集団移転B(分譲済区画整理事業地)…多地域被災者と従前住民が混在するコミュニティ
④ 集団移転C(未分譲の区画整理事業地)…多地域被災者と一般新住民・周辺住民が混在するコミュニティ
⑤ 復興公営住宅A(既存市街地遊休地)…多地域被災者及び周辺住民のコミュニティ
⑥ 復興公営住宅B(未分譲の区画整理事業地内)…④と同様の混在コミュニティ
⑦ 個別移転…自力で移転・再建を目指す個別移転者と既存地域住民のコミュニティ
上記①の具体例として、「新しい田舎」づくりを通した現地での復興を目指しているという南蒲生地区の実践が取り上げられました。安心・安全な暮らしができる環境づくり、次代につなぐ居久根のある景観づくり、南蒲生らしさを活かした産業・交流づくりが進められているということでした。
④および⑥の具体例として、未分譲の区画整理事業地に復興公営住宅と混在して集団移転地が立地する荒井東地区での街づくりも紹介されました。多地域被災者と一般新住民及び周辺住民の混在が想定される中、地下鉄荒井駅を拠点に機能集約型市街地を目指しているということでした。榊原氏によれば、この地区の街づくりにおいては、現時点では子どもの視点はほぼ皆無だと言えるが、移転先の公園緑地等に地域のあそび場を位置づけていくことも可能ではないかということでした。
⑤の具体例として、全住民の3割にあたる人数の被災者が復興公営住宅に移転してくる片平地区の実践も紹介されました。単身世帯が全住民の2割を占め、城下町の昔からの住民も多いこの地区では、震災以前から自主防災やお年寄りの見守り体制づくり、藤坂におけるまちなか農園づくりに取り組む等、街づくりへの意識が高かったということでした。復興公営住宅の入居者に配ろうと地域を紹介するガイドブック「ウェルカム片平」をつくった他、まちなか農園において西公園プレーパークの会と連携した遊び場を開催する等、子どもの視点を意識した取り組みも始まっているということでした。
仮設住宅等での子どもの遊び場づくり活動 (冒険あそび場ネット)
当会からは遊び場づくり活動の実践例を紹介しました。沿岸部にあった近くの小学校も被災し、東六郷小は六郷中、荒浜小は東宮城野小でそれぞれ間借りしています。このような状況に置かれた子どもたちを遊びを通してケアするため、当会では若林区内の仮設住宅、公園、小学校校庭の6か所で遊び場づくりの活動に取り組んでいます。
各々の場所で、その特性に合わせて、子どもたちを中心に、被災し仮設住宅等に暮らす住民と従前地域住民が共に集まれる場づくりに取り組んでいることを紹介しました。また、集団移転地・復興公営住宅予定地の近く立地する場所に近い遊び場が多いことも紹介しました。
意見交換 および 成果
最後に参加者全員で、これからの支援のあり方、当事者の街づくりへの取り組みについて話し合いました。その中で「大人の生活が落ち着かないと子どもたちも落ち着かないのではないか」「移転してくる人と移転先の住民交流できる場が確保されていれば、NPO等の団体がうまく間を取り持ってけるのではないか」「居久根の再生がコミュニティー再生の鍵ではないかという声」「被災者の中にも家族内でも戻りたい家族と戻りたくない家族がいる」「若林西の復興公営住宅ができたときに住民間でざわついてくることを想定し、移って来る人と元々住んでいる人の間を取り持っていくか市民センターや小学校も含め考えていくことが重要だ」「取り組みが子どもにとって被災者にとって地域にとって、各々どのようなメリット、デメリットがあるのか整理しなければならない」「支援者が支援する範囲と被災者がみずからする範囲を考えなければならないのではないか」等の声があがりました。
本学習会では、あたらしい街づくりの進行状況を確認したうえで、子どもの視点が皆無な地区もあれば片平のようにすでに実践されている地区もあるということも確認することができました。当会では今回得られた多くの材料をもとに、今後のあたらしい街づくりに子どもの視点をどのように組み入れていけばよいのか、遊び場づくり活動の実践や学習会を通して引き続き考えていきたいと思います。